Salesforceは、1999年にマーク・ベニオフによって設立されたセールスフォース・ドットコムが提供する顧客管理システムです。
日本国内では翌2000年4月にセールスフォース・ジャパンが設立されて、販売元となっています。
今回は、「Salesforce運用におけるテスト自動化の必要性」と題して、全2回にわたってテスト自動化の必要性について解説します。第1回目となる本記事では、Salesforceの基本情報や特徴、開発環境、Salesforceでカスタマイズが重要な理由について解説します。
Salesforceの基本情報
Salesforce(セールスフォース)は、セールスフォース・ドットコムが提供する顧客管理システムの総称です。
Salesforceの主力製品である「Sales Cloud」は、営業チームの効率化を図るツールで、リードの管理、商談の追跡、売上予測などの機能があります。また、「Service Cloud」はカスタマーサービス向けのツールで、顧客とのやり取りを一元管理できます。他にも、マーケティングオートメーション製品の「Marketing Cloud」や「Account Engagement」、アプリ開発プラットフォーム「Salesforce Platform」など様々な製品を提供しています。
また、近年注目を集めている生成AIを活用した機能もあるため、顧客管理をAIを用いて効率化することも可能です。
Salesforceの特徴・メリット
Salesforceの特徴・メリットは以下の通りです。
- クラウドベースのプラットフォーム
- ローコードで開発できる
- ビジネス要件に合わせてカスタマイズできる
- AppExchangeを活用すれば簡単に機能拡張できる
それぞれについて解説します。
クラウドベースのプラットフォーム
Salesforceは、クラウドベースのプラットフォームです。そのため、ソフトウェアのインストールや管理の手間を削減することができます。データはクラウド上で安全に保存されるため、データ損失のリスクを最小限に抑えることも可能です。
また、Salesforceは年に3回アップデートが自動で行われるため、セキュリティ面も安心です。クラウドベースのプラットフォームを採用することで、企業はITインフラの管理工数を削減することができ、コアビジネスに集中できます。
ローコードで開発できる
Salesforceでは、ローコードでアプリケーションを開発できる環境が用意されています。ローコードとは、ビジュアルインターフェースを使ってアプリケーションを容易に作成できる手法のことです。
プログラミングの知識がなくても開発できるため、エンジニア以外の職種の人でも簡単にカスタマイズを行うことが可能です。また、ローコード開発は、開発時間の短縮やコスト削減にもつながるため、その時必要な開発を都度素早く行うことができます。
なお、必要に応じてコードを書くことで、複雑な要件のカスタマイズも実現可能です。やりたいことに合わせて、適切な開発を選びましょう。
ビジネス要件に合わせてカスタマイズできる
Salesforceは、企業のビジネス要件に合わせてカスタマイズできる柔軟性が高いCRM (Customer Relationship Management:顧客関係管理) ツールです。カスタムオブジェクト、カスタムフィールド、フロー、承認プロセスなどを作成することで、企業独自のビジネスプロセスに合わせた環境を構築できます。
また、ビジネスの成長や変化に合わせて柔軟にカスタマイズしていくことが可能で、企業ごとに存在する風土や環境に合わせたシステムを導入できることはSalesforceの大きな強みとなっています。
AppExchangeを活用すれば簡単に機能拡張できる
Salesforceには、「AppExchange」と呼ばれるアプリケーションマーケットプレイスがあります。AppExchangeには、SalesforceのAppExchangeパートナーが開発したアプリケーションが掲載されています。
掲載されているアプリケーションは、Salesforceの機能を拡張するために利用されます。ビジネス要件にあったアプリケーションをインストールするだけで簡単に機能を拡張することができるので、開発コストを抑えたカスタマイズが容易に実現できます。
こちらから確認することができるので、自社の課題や業種にあったソリューションを見つけてください。最新ニュースやイベントは、こちらから確認できます。
Salesforceの開発環境
Salesforceの開発環境は以下の3つがあります。
- Visual Studio Code
- Sandbox
- Full Sandbox
それぞれについて解説します。
Visual Studio Code
Visual Studio Code (VS Code) は、Microsoftが開発しているコードエディタで、Salesforce開発の際によく用いられます。
VS CodeにSalesforce Extension Packをインストールすることで、Apex、Visualforceページ、Lightningコンポーネントなどの開発を効率的に行うことができます。
Salesforce Extension Packには、シンタックスハイライト、コード補完、デバッグ機能、Salesforceへのデプロイ機能など、Salesforce開発に必要な機能が揃っているため、とても便利です。
また、VS Codeはクラウドベースのバージョン管理システムであるGitHubとの連携もできるため、チーム開発やバージョン管理にも適しています。
Sandbox
Sandboxは、Salesforceで容易に作成できる、本番環境とは分離された開発・テスト環境です。実環境のコピーであるSandbox環境で新機能の開発、カスタマイズ、テストを行うことで、安全かつ効率的に開発を進めることができます。
Salesforceには、Developer Sandbox、Developer Pro Sandbox、Partial Copy Sandboxなど、様々なタイプのSandboxが用意されています。それぞれデータ容量や機能の制限が異なるため、用途に応じたSandBox環境を選びましょう。
なお、Developer Sandboxは小規模な開発や単体テストに適した環境で、データサンプルを含むPartial Copy Sandboxは受け入れテストや、インテグレーションテスト、ユーザートレーニングなどに適しています。
Full Sandbox
Full Sandboxは、本番環境と同じ構成とデータを持つSalesforceのテスト環境です。オブジェクトレコードや添付ファイル等を含む本番環境のすべてのデータがコピーされるため、実際の運用環境に近い状態でアプリケーションの動作を確認できます。
パフォーマンステストやステージングを目的とする場合には、Full Sandboxを活用してみてください。
Salesforceのカスタマイズの重要性
Salesforceをカスタマイズすることで期待できる効果は以下のとおりです。
- ビジネス要件に対応できる
- 事業の成長に合わせて進化させることができる
- Salesforce以外の他システムと連携できる
業務やサービスの基盤として、ツールをストレスなく充分に使いこなし、成果を出しつづけるためには、これらの要素を充たすことは極めて重要です。
Salesforceの特徴・メリットの項目で述べたように、上記の効果はSalesforceがもつ最も大きな強みであるとも言えます。逆説的には、Salesforce導入により期待された効果が生まれなかったり、業務プロセスの変更による現場の混乱や負荷増を招くといった、Salesforceの費用対効果が正しく出ない状況においては、これらが充たされていないことに要因が求められるケースが多いと言えます。
それぞれについて解説します。
ビジネス要件に対応できる
Salesforceのカスタマイズが重要な理由は、カスタマイズを行うことで企業独自のビジネス要件に対応できるためです。会社には業界特有の課題やプロセス、ワークフローがあり、標準機能だけでは今まで通りに仕事を進められないことがよくあります。
カスタムオブジェクトを作成したり、カスタムフィールドを追加したりすることで、管理したい項目をストレスなく正しく管理できるようになります。また、フローを活用することで業務プロセスの自動化を行ったり、ユーザーインターフェース(UI)をカスタマイズしてユーザーエクスペリエンスを向上させたりすることもできます。
自社のビジネス要件にあったシステムとするためにも、Salesforceのカスタマイズは必須だと言えるでしょう。
事業の成長に合わせて進化させることができる
Salesforceは、事業の成長に合わせて進化させることができます。新しい製品やサービスを導入したり、新しい市場に参入したりするたびに、ビジネス要件も変化していきます。
Salesforceは柔軟性の高い製品のため、このような変化が起こった際も素早く対応できます。新しい製品ラインに合わせてカスタムオブジェクトを追加したり、新しい営業プロセスに合わせて承認フローを修正したりといったことを迅速かつ手軽に行うことができます。
また、Apexコードを使ってカスタムロジックを実装することで、より複雑な独自性のあるビジネスルールにも対応が可能です。
Salesforce以外の他システムと連携できる
Salesforceは、Salesforce以外の他システムと連携することができます。ほとんどの企業はSalesforce以外にも、ERP、会計システム、マーケティングオートメーションツールなどを利用しています。
Salesforceをカスタマイズすることで、このような他システムと連携することができ、データの一元管理を実現することができます。他システムと連携し、データのシームレスな流れを実現することで、Salesforceのビジネス価値を最大化することができます。
なお、連携方法としては以下のようなものがあります。
- Salesforce Connect
- Salesforce REST API
- Salesforce SOAP API
- Apex
- MuleSoft
- Dell Boomi
- AppExchange
まとめ
本記事では、Salesforceの基本情報や特徴、開発環境、Salesforceでカスタマイズが重要な理由について解説しました。
第2回では、Salesforceでカスタマイズをすることで起きる課題やSalesforceに必要な5つのテスト、テストを自動化する必要性、テスト自動化の課題について解説します。