2025年はAIエージェント元年と呼ばれ、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」が企業のビジネス環境に次々と導入され始めようとています。従来のCRMを超え、AIが営業・サポート・業務自動化の“主体”として振る舞う時代に、開発・QA(品質保証)チームのテスト体制にも新たな変革が求められています。
しかし、多くの現場ではまだ「AIエージェントをどうテストすればいいのか」という手探りの状態が予想されています。本ブログでは、Agentforce導入時に開発・QAチームの方々が直面する課題を整理し、それをどのようにProvarが支援できるかを、わかりやすく解説します。
Agentforceがもたらす新しいテスト課題
Agentforceは、Salesforce上のデータやメタデータを理解しながら、ユーザーからの自然言語入力に応じて業務プロセスを自律的に実行できるAIエージェントです。この特性は非常に強力ですが、そのテストには従来のUI操作ベースの自動化とはまったく異なる課題が生まれます。
1.AI応答の“非決定性”
同じ質問でも、Agentforceは学習状況やデータの更新によって異なる回答を返す可能性があります。「正しい出力」を単純な文字列比較で判定できないため、従来型のスクリプトテストではカバーしきれません。
2.プロンプトとメタデータの依存関係
Agentforceのふるまいは、背後にあるSalesforceメタデータ(オブジェクト構成や権限設定など)に密接に依存しています。このため、単なるUIテストでは不十分で、「メタデータの整合性」や「プロンプト設計の品質」なども検証対象に含める必要があります。
3.環境変化への脆弱性
AIが連携する外部APIやフロー、Einsteinモデルなどは頻繁に更新されます。これらの変更がエージェントの動作に影響を与えるケースが多く、継続的な回帰テスト体制が不可欠です。
これらの課題に直面する開発・QAチームにとって、「どの段階から何をどうテストすればよいのか」を整理することが最初の壁となります。
Agentforce Testing CenterとProvarの役割
Salesforceは、AIエージェントの品質管理を支援するためにAgentforce Testing Center(ATC)を提供しています。Testing Centerは、Agentforceの動作や応答品質を検証する専用環境であり、特にAIプロンプトの評価やエージェントロジックのデバッグに強みを持ちます。
しかし、Testing Centerがカバーする範囲は現状AIそのものの「学習・回答ロジック」にフォーカスしており、業務アプリ全体のE2Eテストやメタデータ検証、統合テストまでは担っていません。ここで登場するのがProvarです。
Provarがカバーするテスト領域
Provarは、Salesforce専用に設計された「メタデータ駆動型」の自動テストツールです。一般的なSelenium系ツールのようにUI要素をDOMで識別するのではなく、Salesforceの内部構造を理解してテストを構築できる点が大きな特徴です。
Salesforceのテストだけでなく、Agentforce導入時も、Provarは以下のような4つのテスト段階で中心的な役割を果たします。
① 初期段階 ― エージェント開発と環境構築
Agentforceの設定や権限、オブジェクト構成の変更が頻繁に発生する初期段階では、Provarがメタデータの自動取得と整合性検証を担います。この時点でProvarを導入しておくと、UI・フロー・オブジェクトが追加されても自動的にテスト資産が更新され、環境変更に強い基盤を築けます。
また、ProvarはSalesforce環境に直接アクセスしてデータシード(テストデータ生成)を自動化できるため、AIテストの前提となる状態を即座に再現可能です。
② 開発段階 ― プロンプト検証とE2Eテスト
Agentforceが業務アプリを呼び出す際、その経路にはUI操作、API連携、承認フローなどさまざまなSalesforce機能が関与します。Provarはこれらの一連のプロセスを統合的に自動テストできます。
さらに、Provarの新版からサポートされたAI支援機能(Provar AI)を使えば、自然言語でテストシナリオを生成したり、想定プロンプトに対するテストケースを自動生成することも可能です。たとえば「顧客情報を更新するエージェントの動作を検証したい」と入力すれば、必要なテストフローが自動提案されます。
③ 検証段階 ― 回帰・非機能テストへの対応
Agentforce導入後のリリース前には、頻繁なメタデータ変更やAPI更新に対して回帰テストの自動実行が求められます。Provarのスケジュール実行機能やCI/CD連携(Jenkins、GitHub Actionsなど)を用いることで、エージェントの応答品質やフロー実行結果の変化を継続的に監視できます。また、Provarはスクリーンキャプチャ比較や応答検証のしきい値設定など、AIテスト特有の“曖昧な判定”にも柔軟に対応します。
④ 運用段階 ― モニタリングと継続的な改善
運用フェーズでは、AgentforceのAI学習や業務プロセスの拡張に伴い、テストも進化し続ける必要があります。Provarは、運用環境で発生した不具合やエラーケースを自動的に収集し、テストシナリオにフィードバックする機能を備えています。これにより、現場でのインシデントを次回のテスト資産に自動的に反映でき、AIエージェントの“学習サイクル”とQAサイクルを融合させることができます。
Agentforce Testing Centerとの使い分け
ここまでの流れを見ると、「Provarだけで全部できるのでは?」と思われるかもしれません。実際、ProvarはAgentforceの初期段階から運用段階までを包括的に支援できます。ただし、Testing Centerを初期段階で使用したり、実装・運用時にはProvarを組み合わせるなど、次のように役割を分けるのも有効です。
Agentforce Testing Center:AIエージェントの“会話ロジック”や“回答の妥当性”を検証する。
Provar:Salesforce全体にわたる一連の業務テスト、回帰テスト、自動データ生成、外部連携を含むE2E品質管理を担当
つまり、ざっくりと“Agentforceの中のAI”を評価するのがTesting Center、また“外側のビジネスプロセス全体”を保証するのがProvar、という補完または協調関係にあります。このTesting CenterとProvarによる実践的な分業戦略に関しては、別のブログ記事でしっかりと解説する予定です。
まとめ ― AIエージェントの品質保証でProvarがもたらす3つの価値
Agentforceの登場は、Salesforceの世界に“AIが働く仲間になる”という新たな価値観をもたらしました。その一方で、品質保証のあり方はこれまで以上に高度化しています。
Agentforceを含むAI時代のテストにおいて、Provarが特に高く評価されているのは次の3点です。
1.Salesforceメタデータとの親和性:オブジェクト構造や権限を理解したテストが可能で、環境変更に強い。
2.AI駆動のテスト自動生成:テスト設計の属人性を排除し、開発とQAの協働を促進する。
3.E2Eテストと継続的な品質保証の統合:複雑なビジネスシナリオを検証するE2Eテストと回帰テスト、API連携、モニタリングを一貫して自動化できる。
これらの特性は、Agentforceだけでなく、Einstein、Flow、Slack連携など、Salesforce全体の“AI拡張環境”にも共通して有効です。
AIエージェント時代のテストは単なる検証作業ではなく、AIとともに進化する継続的な品質サイクルへ。Provarはその中核を担う存在として、Agentforce導入を成功に導く重要なパートナーとなるでしょう。
